株式会社DeepX(本社:東京都文京区、代表取締役:那須野薫、以下 DeepX)と株式会社タダノ(本社:香川県高松市、代表取締役社長:氏家俊明、以下タダノ)は、共同してAI技術を活用した移動式クレーンを対象とした自動化の研究開発を続けてまいりました。本取組みの背景とその技術的アプローチをご紹介いたします。
■背景と目的
クレーンは建築や土木の現場はもちろんのこと、幅広い産業の様々な現場で揚重作業に従事する建設機械です。クレーンのオペレータは自身の目で吊り荷の位置を確認しながら、複数のレバーを同時に操作する必要があります。また、クレーンは機械のたわみや風による影響を受けるため、操作の熟練に長い期間を要します。その一方で、日本においては少子高齢化による生産年齢人口の減少に伴い、建設従事者が減少しており、クレーンを自在に操作できる熟練オペレータの減少も大きな課題となっています。本取組みではAI技術などを活用した技術革新によって移動式クレーンの操作をより簡略化・容易化・自動化・自律化することで、現場の安全性を向上させることを目的に研究開発を行っています。
移動式クレーンに関連する課題と自動化によって期待できる効果
自動化の検証を行った移動式クレーン
無人のオペレータ席の様子
■クレーン操作の自動化の技術的アプローチ
クレーンは建設機械の中でも最も操作が難しいものの一つと言われています。その理由のひとつとして、荷物を吊った状態でクレーンのブームを旋回させ、目的地の真上で停止させようとすると吊り荷が振り子の原理で振れてしまう「荷振れ」が発生するためです。この荷振れは、周囲の作業員の安全を確保するためになるべく抑制する必要がありますが、熟練のオペレータであっても荷振れを素早く抑制することは難しいと言われています。そこでDeepXとタダノは、強化学習を応用したアプローチを用いて制御アルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムの特徴は、制御対象のシステムの挙動を一意に同定して設計するのではなく、シミュレーションデータおよび実機の設計値に基づいて制御アルゴリズムの学習・最適化をすることで、荷揺れを抑制しながら吊り荷を安全、かつ正確に任意の位置に移動できることです。
技術的アプローチの概要図
●クレーン自動化取組みの紹介映像
■今後の展開
本取組みでは「クレーンの3連操作(旋回・起伏・ウインチ操作)での吊り荷搬送における荷振れの軽減」というテーマにおいて一定の成果を得られるところまで至っています。今後もDeepXはタダノと共同で、移動式クレーンを対象とした、より複雑なクレーン操作の自動化に向けた技術の更なる高度化に取り組む予定です。また、幅広い産業のさまざまなクレーンへのこの技術の社会実装を目指してまいります。
■株式会社DeepXについて
DeepXは、「あらゆる機械を自動化し、世界の生産現場を革新する」というミッションを掲げて活動する、東京大学松尾研究室発のAIスタートアップです。多くの産業で問題となる労働力不足、熟練作業者不足、過酷作業等の現場の課題の解決を目指し、AIをはじめとするさまざまな技術を駆使し、あらゆる機械を自動化し、幅広い作業の自動化を推進してまいります。
本社所在地 東京都文京区湯島三丁目21番4号第一三倉ビル3階
設立 2016年4月22日
代表者 代表取締役 那須野薫
事業内容 機械自動化や現場作業自動化の支援、AI技術を活用した事業開発、ソフトウェア開発、R&D
URL https://www.deepx.co.jp/
■株式会社タダノについて
1955 年に日本発の油圧式トラッククレーンを開発し、建設用クレーンのトップ企業の一つとして業界を牽引。常に時代のニーズを捉えた製品開発に力を入れ、LE(Lifting Equipment)事業で世界No.1を目指しています。1991年にFAUN社、2019年にDemagブランドのクレーン事業を買収し、さらなるグローバル化に取り組んでいます。 また、地域社会・国際社会発展への貢献と地球環境の保全に役立つ事業活動を推進し、すべてのステークホルダーの期待に応え「世界に、そして未来に誇れる企業」を目指しています。
■お問い合わせ先
info@deepx.co.jp